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2026.1.7 / 最終更新日: 2026.01.07

妊娠初期(4〜15週)

マタニティライフの過ごし方

妊婦は飛行機にいつまで乗れる?診断書の要否と時期別の注意点解説

妊娠中に里帰り出産や旅行、仕事などで飛行機を利用する予定がある方にとって、搭乗時期や必要な準備について不安を感じることは少なくありません。「いつまで飛行機に乗れるの?」「診断書は必要?」「赤ちゃんへの影響は大丈夫?」といった疑問をお持ちの方も多いでしょう。

妊娠中の飛行機搭乗は、適切な時期と準備を行えば基本的に可能です。ただし、出産予定日が近づくにつれて航空会社の規定が厳しくなり、診断書の提出や医師の同伴が必要となります。この記事では、妊娠時期ごとの搭乗条件や注意点、機内で快適に過ごすためのポイントを詳しく解説します。

妊娠中の飛行機搭乗制限と医師の診断書が必要な時期

各航空会社は国土交通省の定めに基づき、妊娠中の搭乗に一定の制限を設けています。出産予定日が近づくほど、より厳格な条件が適用されるため、利用前に必ず確認しましょう。

出産予定日28日前からの診断書提出義務

出産予定日を含めて28日以内の搭乗では医師による診断書の提出が必須となります。これは国内線・国際線ともに共通の規定です。診断書は搭乗日を含めて7日以内に発行されたもので、「お客様が航空旅行を行われるにあたり、健康上支障がない」という旨を医師が明記する必要があります。

診断書は航空会社が用意している所定の様式を使用することもできますが、かかりつけの産科医が作成したものでも問題ありません。JALやANAの公式サイトから診断書のフォーマットをダウンロードすることも可能です。

診断書の取得には診察が必要となるため、搭乗予定日の1週間前には主治医に相談することをおすすめします。また、往復で飛行機を利用する場合は、帰りの便についても診断書が必要になる点に注意が必要です。帰りの便用の診断書は、往復の診断書を事前にまとめて取得しておくか、目的地で再度医師の診察を受ける必要があります。

出産予定日7日前からの医師の同伴条件

出産予定日を含めて7日以内の搭乗では、診断書の提出に加えて医師の同伴が必要となります。この規定は、機内での急な出産リスクを考慮したものです。

同伴する医師は産科医である必要があり、搭乗中に万が一の事態が発生した際の対応を想定しています。この時期の搭乗は母体と赤ちゃんの両方にリスクが高いため、やむを得ない事情がない限り避けることが望ましいでしょう。

また、出産予定日28日以内の妊婦が同伴できる幼児は1名のみとなり、その場合は子供分の航空券を購入してチャイルドシートを利用する必要があります。膝の上に抱いての搭乗はできませんので、事前に準備が必要です。

妊娠時期別の搭乗リスクと注意点

妊娠期間は初期・中期・後期で体調や赤ちゃんの状態が大きく異なるため、それぞれの時期に応じた注意点を理解しておくことが重要です。

妊娠初期の流産リスクやつわりへの対応

妊娠初期(0~15週)はつわりの症状が強く現れやすい時期です。機内の気圧変化や揺れ、独特の匂いなどが引き金となり、吐き気や嘔吐が悪化する可能性があります。

妊娠初期は自然流産が起こりやすい時期でもありますが、飛行機に乗ること自体が直接的な流産の原因になるという医学的根拠はありません。流産の多くは胎児の染色体異常によるもので、母体の行動とは関係がないとされています。ただし、出血や腹痛などの症状がある場合は搭乗を控えるべきです。

この時期に飛行機を利用する場合は、通路側の座席を予約し、体調が悪くなった際にすぐトイレに行けるようにしておくと安心です。また、エチケット袋を手元に用意しておくことも推奨されます。可能であれば、妊娠初期の体調が不安定な時期は飛行機の利用を避け、体調が安定する妊娠中期まで待つことが理想的です。

妊娠中期の安定期における移動のメリット

妊娠中期(12~28週)は安定期とも呼ばれ、飛行機搭乗に最も適した時期とされています。つわりが落ち着き、お腹もまだそれほど大きくないため、比較的快適に移動できます。

この時期は流産のリスクも低下し、体調が安定していることが多いため、里帰り出産のための移動や旅行を計画するなら妊娠中期がおすすめです。多くの産科医も、妊娠中に飛行機を利用するなら妊娠12週から28週頃までが適していると考えています。

ただし、安定期であっても絶対に安全というわけではないため、主治医への相談は必須です。妊娠中期であっても、前置胎盤や切迫早産の兆候がある場合、重度の貧血がある場合、妊娠高血圧症候群の症状がある場合などは搭乗を見合わせる必要があります。

妊娠後期の早産リスクと機内出産の回避

妊娠後期(28週以降)は、お腹が大きくなり母体への負担が増す時期です。長時間の座位姿勢が苦痛になりやすく、エコノミークラス症候群のリスクも高まります。

出産予定日が近づくと、いつ陣痛が始まってもおかしくない状態となります。機内で出産となった場合、十分な医療設備がないため母子ともに危険な状態に陥る可能性があります。また、他の乗客に多大な迷惑をかけることにもなり、場合によっては最寄りの空港への緊急着陸を余儀なくされることもあります。

里帰り出産を予定している場合は、できるだけ妊娠32週までには移動を完了させることが推奨されています。妊娠37週以降は正期産の時期に入るため、この時期の飛行機利用は極力避けるべきです。やむを得ず妊娠後期に搭乗する場合は、必ず主治医に相談し、診断書を取得してから利用しましょう。

母体と胎児への医学的影響と安全性の根拠

飛行機に搭乗することで、母体や赤ちゃんにどのような影響があるのか、医学的な観点から確認していきましょう。

気圧変化による酸素濃度低下と腹部膨満感

飛行機の機内は、水平飛行中で約0.8気圧程度に保たれており、これは標高約2,000メートルの高さに相当する環境です。気圧が低下すると体内のガスが膨張するため、腹部膨満感や呼吸のしづらさを感じることがあります

気圧の低下に伴い、腸管内のガスも膨張するため、お腹の張りや不快感を覚えることがあります。特に離着陸時には気圧変化が大きいため、症状が強く出ることがあります。酸素濃度も地上より低くなりますが、健康な妊婦であれば胎児への影響はほとんどないとされています。

ただし、心臓や呼吸器に持病がある場合、重度の貧血がある場合は注意が必要です。ヘモグロビン値が8.5g/dl以下の貧血がある場合は、搭乗を見合わせることが推奨されています。

気圧変化による体調不良を予防するには、炭酸飲料を避けることが重要です。炭酸ガスが体内で膨張し、不快感を増幅させる可能性があるためです。また、機内食は消化の良いものを選び、食べ過ぎないようにすることも大切です。

宇宙線による被曝量の許容範囲

上空では地上よりも多くの宇宙線(放射線)を浴びることになります。東京とニューヨークを往復した場合の被曝量は約0.1~0.16ミリシーベルト程度です。

妊娠初期の胎児に影響が出るとされる被曝量は100ミリシーベルト以上であり、通常の飛行機利用でこの数値に達することはありません。日本とヨーロッパを往復する程度であれば、胎児への影響はほとんど心配する必要がないといえます。実際、客室乗務員の流産率が他の職業の女性と大差ないという研究結果からも、飛行機搭乗による放射線の影響は限定的であることが示されています。

また、搭乗前の保安検査で使用される金属探知機は、X線などの放射線を照射するものではなく、微弱な電磁波を使用しているため母子に障害を与える可能性はありません。国土交通省も、金属探知機やボディスキャナーの検査が母体や胎児に影響を与えることはないと明記しています。

それでも不安がある場合は、検査員に妊娠中であることを伝えれば、他の方法(接触検査など)で対応してもらえることがあります。

エコノミークラス症候群の予防策

妊娠中は血液が固まりやすく、また子宮が大きくなることで静脈が圧迫されるため、エコノミークラス症候群のリスクが高まります。エコノミークラス症候群(深部静脈血栓症)は、長時間同じ姿勢で座り続けることで足の静脈に血栓ができ、それが肺の血管に詰まる病気です。

妊娠中は出産に備えて血液を固める成分の働きが強くなっているため、妊娠していない人に比べて血栓ができやすい状態にあります。また、大きくなった子宮が骨盤内の静脈を圧迫することで、下肢からの血液の戻りが悪くなり、むくみやすい状態となっています。

予防のためには、以下の対策が効果的です。

まず、1~2時間ごとに席を立って機内を軽く歩くことが重要です。トイレに行く機会を利用して、通路を往復するだけでも効果があります。座席に座ったままでも、足首を回す、つま先を上下に動かす、ふくらはぎを軽くマッサージするなどのストレッチを定期的に行いましょう。

水分補給も重要な予防策です。機内は湿度が10~20%と非常に乾燥しているため、こまめに水やお茶を飲むよう心がけてください。ただし、炭酸飲料やカフェインを多く含む飲み物、アルコールは避けましょう。目安として、2~3時間のフライトで500ml程度の水分を摂取することが推奨されます。

また、着圧ソックスや弾性ストッキングの着用も血流を促進し、むくみを軽減する効果があります。締め付けの強さは、医療用ではなく市販の軽めの着圧タイプで十分です。

JALとANAの妊婦向けサポートサービスと予約手順

国内の主要航空会社であるJALとANAでは、妊娠中の利用者に向けたさまざまなサポートサービスを提供しています。これらのサービスを活用することで、より快適で安心な空の旅を実現できます。

事前改札サービスとスマイルサポートの活用

JALでは「スマイルサポート」という名称で、妊娠中のお客様へのサービスを展開しています。搭乗時には優先的に機内へ案内してもらえる事前改札サービスを利用できます。搭乗口の係員に妊娠中であることを伝えれば、一般の搭乗が始まる前に機内に入ることができます。

これにより、混雑を避けてゆっくりと搭乗でき、荷物の収納や座席への移動もスムーズに行えます。また、機内での座席の確保や荷物の収納に余裕ができるため、ストレスを軽減できます。

ANAでも同様に、3歳未満の子供連れの方や妊娠中の方を対象に、先に機内へ案内するサービスを提供しています。このサービスを希望する場合は、搭乗口係員にその旨を伝えてください。運航状況により実施できない場合もありますが、基本的には優先搭乗が可能です。

また、妊娠中のお客様には、ANAオリジナルの「マタニティマークタグ」が配布されています。このタグをバッグなどに付けておくことで、周囲の人に妊娠中であることを知らせることができ、配慮を受けやすくなります。

妊娠中のお客様のみで搭乗される場合、JAL・ANAともに空港でのチェックインカウンターから搭乗ゲートまで(ラウンジ利用対象のお客様はラウンジまで)案内してもらえるエアポートサポートサービスも利用できます。電話で事前に申し込む必要がありますが、不安がある方は活用すると良いでしょう。

通路側座席の指定と優先的な案内

妊娠中の飛行機利用では、通路側の座席を指定することを強くおすすめします。トイレに行きやすく、気分が悪くなった際にも席を立ちやすいためです。

座席予約の際は、トイレに近い場所を選ぶとさらに便利です。妊娠中は頻尿になりやすく、つわりで急にトイレに行きたくなることもあるため、トイレへのアクセスが良い座席を選ぶことで安心感が増します。

ただし、妊娠中の方は非常口座席を利用できないという制限があります。これは、緊急時に迅速な援助が必要となる可能性があるためです。非常口座席を予約していた場合でも、妊娠が判明した時点で航空会社に連絡して座席を変更してもらう必要があります。

羽田空港第2旅客ターミナルでは、搭乗口までの長距離歩行が不安な妊娠中のお客様のために、電動カートが用意されています。利用したい場合は、当日カウンター係員に申し出てください。台数に限りがあり、ご利用に制限がある場合もありますが、お腹が大きくなって歩行が辛い時期には大変便利なサービスです。

機内持ち込み必須アイテムと快適に過ごすポイント

妊娠中に飛行機を利用する際は、万が一の事態に備えて必要なものを機内に持ち込むことが重要です。預け荷物ではなく、必ず手荷物として携帯しましょう。

母子健康手帳と健康保険証の常備

母子健康手帳と健康保険証は必ず手荷物として機内に持ち込みましょう。母子健康手帳には妊娠の経過や通院している医療機関の情報が記載されているため、万が一体調が悪くなった際に適切な対応を受けるために不可欠です。

さらに、かかりつけ医の連絡先や緊急連絡先を書いたメモも用意しておくと安心です。家族や友人の連絡先も含めて、すぐに取り出せる場所に保管しておきましょう。

目的地の産婦人科の情報も事前に調べ、メモしておくことをおすすめします。到着先で体調を崩した場合に、すぐに医療機関を受診できるよう準備しておくことが大切です。産婦人科の名称、住所、電話番号、診療時間などを控えておきましょう。

診断書が必要な時期に搭乗する場合は、診断書も忘れずに携帯してください。チェックイン時に提示を求められますので、すぐに取り出せる場所に入れておくことをおすすめします。

着圧ソックスと水分補給による血流維持

エコノミークラス症候群を予防するために、着圧ソックスや弾性ストッキングの着用が効果的です。これらは足の血流を促進し、むくみを軽減する効果があります。

着圧ソックスは、搭乗前に履いておくのがおすすめです。医療用の強い着圧タイプではなく、市販の軽めの着圧タイプで十分効果があります。履くのが難しい場合は、搭乗後に客室乗務員にサポートを依頼することもできます。

機内では、こまめな水分補給を心がけましょう。ペットボトルの水やお茶を持ち込んでおくと、いつでも飲むことができて便利です。機内サービスで提供される飲み物だけでは不足する可能性があるため、自分で用意しておくことが大切です。目安として、2~3時間のフライトで500ml程度の水分を摂取しましょう。

服装は、体を締め付けないゆったりとしたものを選びましょう。特にお腹周りや胸、足首などを締め付けない服を選ぶことが重要です。マタニティウェアや、ウエストがゴムになっているパンツなどがおすすめです。

スリッパやルームシューズを持参して機内で履き替えると、足が楽になります。むくみ対策にもなりますし、長時間のフライトでも快適に過ごせます。ただし、緊急時にすぐに履けるよう、脱ぎ履きしやすいものを選びましょう。

マタニティマークの提示と客室乗務員への申告

妊娠初期でお腹がまだ目立たない時期でも、マタニティマークを見えるところに付けておくことで、周囲の理解と配慮を得やすくなります

マタニティマークは、自治体の窓口や母子健康手帳の交付時に配布されることが多いですが、インターネットでダウンロードして印刷することもできます。バッグの持ち手や目立つ場所に付けておくと、周囲の人が気づきやすくなります。

搭乗したら、客室乗務員に妊娠中であることを伝えておきましょう。何か困ったことがあった際に、スムーズにサポートを受けることができます。気分が悪くなった場合や、お腹の張りを感じた場合は、遠慮せずにすぐに客室乗務員に相談してください。

シートベルトは腰の低い位置に締め、お腹を圧迫しないよう注意します。お腹の膨らみの下を通すように締めることで、赤ちゃんへの圧迫を避けられます。ベルトの長さが足りない場合は、延長用のベルトが機内に用意されているため、客室乗務員に依頼しましょう。

また、機内では適度に体を動かすことも大切です。座ったままできるストレッチや、通路を歩くことで血行を促進できます。ただし、シートベルト着用サインが点灯している時や、気流が不安定な時は無理に動かず、安全を最優先してください。

まとめ

妊娠中の飛行機搭乗は、適切な時期と準備を行えば基本的に可能ですが、出産予定日が近づくにつれて制限が厳しくなります。出産予定日を含めて28日以内の搭乗では医師の診断書が必要となり、7日以内の場合は診断書に加えて医師の同伴が求められます。

最も搭乗に適しているのは妊娠中期の12~28週です。この時期はつわりが落ち着き、体調も比較的安定しているため、里帰り出産や旅行の計画がある場合はこの時期を選ぶことをおすすめします。

機内では、エコノミークラス症候群や気圧変化による体調不良を防ぐため、こまめな水分補給と適度な運動を心がけましょう。1~2時間ごとに席を立って軽く歩く、座ったまま足首を回すなどのストレッチを行うことが効果的です。

通路側座席を予約することで、トイレに行きやすく体調の変化にも対応しやすくなります。また、着圧ソックスの着用や、ゆったりした服装を選ぶことも快適な空の旅のポイントです。

母子健康手帳、健康保険証、診断書(必要な場合)は必ず手荷物として持ち込み、マタニティマークを見えるところに付けておくことで、周囲の配慮を得やすくなります。搭乗後は客室乗務員に妊娠中であることを伝え、何か不安を感じた際はすぐに相談できる体制を整えておきましょう。

最も重要なのは、搭乗前に必ず主治医に相談することです。妊娠の経過や体調は個人差が大きいため、医師の判断を仰いでから飛行機の利用を決定してください。各航空会社が提供する妊婦向けサポートサービスも積極的に活用し、安全で快適な旅を実現しましょう。

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