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2025.10.7

妊娠中期(16〜27週)

健康と美容

妊婦健診で尿蛋白が出たら?原因と4つの対策を詳しく解説

妊婦健診で「尿蛋白が陽性です」と伝えられたら、不安になりますよね。尿蛋白は妊娠中に出やすくなるものですが、妊娠高血圧症候群などの兆候を示すこともあるため、しっかりと理解しておくことが大切です。

この記事では、妊婦健診での尿蛋白検査について、陽性になる原因や対処法を分かりやすく解説します。

妊婦健診の尿蛋白検査とは

妊婦健診では毎回、尿検査が行われます。これは妊娠中の母体と赤ちゃんの健康状態を確認するための大切な検査です。

尿蛋白検査では、尿の中にタンパク質が含まれていないかを調べます。通常、腎臓は血液をろ過する際に、体に必要なタンパク質を再吸収し、不要な老廃物だけを尿として排出します。しかし、何らかの理由で腎臓の機能が低下すると、タンパク質が尿中に漏れ出してしまうのです。

尿蛋白は妊娠高血圧症候群や腎疾患の兆候として現れることがあるため、妊婦健診では毎回チェックされています。

尿蛋白が陽性・プラスの意味

尿検査の結果は、試験紙を尿に浸して色の変化から判定する「試験紙法」という方法で行われます。

検査結果は以下のように表示されます。

  • -(マイナス):正常。尿にタンパク質がほとんど含まれていない状態
  • ±(プラスマイナス):弱陽性。わずかにタンパク質が確認されている状態
  • +(1プラス):陽性。タンパク質が尿中に検出されている状態
  • ++(2プラス)以上:陽性。タンパク質の濃度が高い状態

母子手帳の尿蛋白の欄は「-」「+」「++」の3つに分かれています。プラスの数が多いほど、尿中のタンパク質濃度が高いことを示しています。

妊娠中は腎臓に負担がかかり尿蛋白が出やすいため、一時的に陽性やプラスマイナスになることは珍しくありません。一度陽性が出たからといって、必ずしも病気というわけではないので、過度に心配する必要はありません。

尿蛋白の基準値と再検査の目安

日本腎臓学会では、+(1プラス)以上を陽性としています。

妊婦健診での判定基準は以下の通りです。

  • 2回以上連続して+判定が出た場合:陽性と判定
  • 1度でも2+の判定が出た場合:陽性と判定

より詳しい検査が必要な場合は、以下の方法で蛋白尿を診断します:

  • 24時間蓄尿:1日分の尿を集めて、尿中蛋白定量が300mg以上かどうかを確認
  • 尿蛋白クレアチニン比(P/C比):外来で簡単に検査でき、0.3以上で蛋白尿と診断

1dlの尿中に15mg/dl以上のタンパク質が認められた場合に、尿蛋白と判定されます。

妊婦の尿蛋白陽性の主な原因

尿蛋白が陽性になる原因は、大きく分けて病的なものと一時的なものがあります。

妊娠高血圧症候群の可能性

尿蛋白陽性で最も注意が必要なのが妊娠高血圧症候群です。

妊娠高血圧症候群は、妊娠20週以降に高血圧が見られる病気で、全妊娠の5~10%に発症します。以前は「妊娠中毒症」と呼ばれていました。

診断基準

妊娠中に以下の血圧になった場合、妊娠高血圧症候群と診断されます。

  • 収縮期血圧(上の血圧)が140mmHg以上
  • 拡張期血圧(下の血圧)が90mmHg以上

特に収縮期血圧が160mmHg以上、または拡張期血圧が110mmHg以上の場合は、重症として厳重な管理が必要です。

高血圧に加えて蛋白尿(1日当たりの尿蛋白0.3g以上)が認められる場合、または高血圧に肝臓や腎臓の機能障害、血液凝固障害、神経障害、赤ちゃんの発育不全などが認められる場合は「妊娠高血圧腎症」と診断されます。

症状

妊娠高血圧症候群は、初期の段階では自覚症状がほとんどなく、妊婦健診で指摘されて初めて気づくケースが多いです。

重症化すると以下の症状が現れることがあります。

  • 頭痛
  • 目の前がチカチカする
  • 吐き気や嘔吐
  • 上腹部(みぞおち)の痛み
  • 重度のむくみ
  • めまい
  • 耳鳴り

このような症状を感じた際には、すぐに病院へ連絡しましょう。

腎機能低下や腎臓病の関連

腎臓の機能が低下していると、タンパク質が尿中に漏れ出しやすくなります。

妊娠すると、母体だけでなく赤ちゃんの老廃物も処理する必要があるため、腎臓への負担が大きくなります。妊娠中は血液量が約1.5倍に増加し、腎臓のろ過量も増えるため、腎臓が疲れやすい状態になっているのです。

もともと慢性腎炎などの腎臓病を持っている方が妊娠した場合は、高血圧合併妊娠として特に注意深い管理が必要になります。

妊娠糖尿病との関係

尿蛋白と尿糖は別のものですが、妊娠糖尿病のある方は妊娠高血圧症候群を合併しやすいことが分かっています。

尿蛋白はタンパク質が尿中に含まれている状態で、腎機能の低下や妊娠高血圧症候群の可能性を示します。一方、尿糖は糖分(ブドウ糖)が尿中に含まれている状態で、妊娠糖尿病や糖尿病合併妊娠が疑われます。

妊娠糖尿病を適切に治療すると、妊娠高血圧症候群の合併が防げるという研究結果もあります。そのため、尿糖と尿蛋白の両方を定期的にチェックすることが大切です。

一時的な尿蛋白の原因

病気以外でも、以下のような理由で一時的に尿蛋白が陽性になることがあります。

生理的な原因

  • 疲労やストレス:体が疲れているときに一時的に出ることがあります
  • 運動後:激しい運動をした後に陽性になることがあります
  • 睡眠不足:十分な休息が取れていないとき
  • 循環血液量の増加:妊娠によって血液量が増え、腎臓に負担がかかります
  • 赤ちゃんの老廃物処理:母体だけでなく赤ちゃんの老廃物も処理するため

検査の誤差

  • 水分不足:尿が濃縮されて陽性になることがあります
  • おりものの混入:採尿時におりものが混じると陽性になることがあります
  • 前日の性交渉:精液が混ざると偽陽性になることがあります

このような一時的な原因の場合は、時間を置いて再検査すると正常に戻ることが多いです。

正確な検査のために、中間尿(最初の尿を少し捨ててから採尿する)を採取し、おりものを拭いてから採尿するようにしましょう。

尿蛋白が母体と赤ちゃんに与える影響

尿蛋白が陽性になり、妊娠高血圧症候群と診断された場合、母体と赤ちゃんの両方に影響を及ぼす可能性があります。

母体へのリスク

妊娠高血圧症候群が重症化すると、以下のような重い合併症を引き起こすことがあります。

子癇(しかん)

妊娠20週以降に起こるけいれん発作のことです。てんかんや脳出血など、妊娠高血圧症候群以外に原因がないものを指します。長時間続くと母子ともに命の危険があります。

以前はよく見られましたが、最近では血圧管理が進歩したため、ほとんど見かけることはなくなりました。ただし、頭痛、めまい、目がチカチカする、吐き気、胃痛などの症状は子癇発作の前兆であることがあるため、注意が必要です。

HELLP症候群

溶血性貧血(赤血球の破壊)、肝臓の機能悪化(肝逸脱酵素の上昇)、血小板減少を起こす重篤な疾患です。妊娠の後半から産後に発症しやすく、診断が遅れると全身の多くの臓器がダメージを受けて致命的になります。

重症妊娠高血圧腎症では10~20%の患者に発症するといわれています。

その他の合併症

  • 脳出血:血圧が急激に上昇することで起こります
  • 心不全:心臓への負担が大きくなります
  • 肺水腫:肺に水が溜まり呼吸困難になります
  • 肝臓や腎臓の機能障害:臓器にダメージを与えます
  • 血液凝固障害:血が固まりにくくなります

赤ちゃんへのリスク

妊娠高血圧症候群は、赤ちゃんにも以下のような影響を及ぼす可能性があります。

胎児発育不全(FGR)

子宮や胎盤での血液の流れが悪く、赤ちゃんに十分な栄養や酸素が届かないため、成長が遅れてしまうことがあります。普通よりも体重の少ない赤ちゃん(低出生体重児)が生まれる場合もあります。

常位胎盤早期剥離

出産前に正常な位置にある胎盤が子宮から剥がれてしまい、赤ちゃんに酸素が届かなくなってしまいます。全妊婦さんの0.5~1.3%に起こりますが、妊娠高血圧症候群の場合は発症リスクが高くなります。

症状には腹痛、性器出血、腹部緊満感、胎動の減少などがあり、赤ちゃんの死亡につながるケースも多い病気です。母体も子宮摘出や出血性ショックで命を失うリスクが伴います。

胎児機能不全

赤ちゃんが酸素不足になり、胎児の心拍に異常が起こりやすくなります。そうなれば、できるだけ早く赤ちゃんを取り出さねばなりません(帝王切開が必要になることが多いです)。

胎児死亡

最悪の場合、お腹の中で赤ちゃんが亡くなってしまうこともあります。

早期に発見できれば、重症化を防ぐことができたり、赤ちゃんへの影響も最小限になります。そのため、妊婦健診をきちんと受けることがとても大切です。

尿蛋白を指摘された際の対処法

尿蛋白が陽性になったら、どのように対処すればよいのでしょうか。

医師の指示に従う重要性

尿蛋白が陽性になった場合、自己判断せず、必ず医師の指示に従うことが最も重要です。

検査結果や妊婦さん・赤ちゃんの状態によって、必要な対応は異なります。軽症であれば通院での管理が可能ですが、重症の場合や合併症がみられる場合は入院管理が基本となります。

再検査と精密検査

一度陽性が出ても、再検査で正常に戻ることもあります。医師が必要と判断した場合は、以下のような精密検査が行われます。

  • 24時間蓄尿検査:1日分の尿を集めて、正確な尿蛋白量を測定します
  • 尿蛋白クレアチニン比(P/C比):外来で簡単に測定できる検査です
  • 血液検査:腎機能や肝機能などを詳しく調べます
  • 血圧測定:家庭でも定期的に測定するよう指導されることがあります

治療方針

妊娠高血圧症候群の根本的な治療は、妊娠の終了(分娩)です。現在の医学では対症療法はあっても完治させる方法はないため、母体や赤ちゃんが危険な状態になった場合には、帝王切開や促進分娩などが行われます。

軽症の場合は、安静と食事療法を中心とした管理を行いながら、できるだけ妊娠を継続させます。

日常生活で気をつけること

尿蛋白が陽性になった場合、日常生活で以下の4つのポイントに気をつけることが大切です。

食生活の見直し

塩分制限

塩分の過剰摂取は腎臓に大きな負担をかけ、血圧を上げる原因になります。

  • 目標:6.5g未満、できれば7~8g/日以下に抑えましょう
  • 味付けは薄めにし、調味料は控えめに
  • 加工食品(ハム、ソーセージ、漬物など)は塩分が多いので注意
  • だしをしっかりとって、うま味で満足感を得る工夫をしましょう

ただし、過度な塩分制限は逆効果になることもあります。水分摂取制限や利尿剤の使用は血栓症のリスクを高めるため、必ず医師や栄養士の指導のもとで管理を受けてください。

糖分の制限

高血糖も腎臓に負担をかけます。

  • 甘いお菓子や高カロリーなものは避けましょう
  • 清涼飲料水やジュースは控えめに
  • 炭水化物の摂りすぎにも注意が必要です

バランスの良い食事

  • 良質なタンパク質(魚、大豆製品、卵など)を適度に摂取
  • 野菜や果物を積極的に(ただし果物は糖分が多いので食べ過ぎに注意)
  • 1日3食、規則正しく食べる
  • 食べ過ぎず、適切なカロリー摂取を心がける

水分摂取

こまめな水分補給が大切です。

  • 目標:2.5L/日を意識して、少しずつ飲みましょう
  • 水分不足で尿が濃縮されると、尿蛋白が陽性になりやすくなります
  • ただし、むくみがひどい場合は医師に相談してください
  • 水やお茶を中心に、清涼飲料水は避けましょう

妊娠健診の2時間前には食事を済ませ、適度に水分を摂っておくと、正確な検査結果が得られやすくなります。

体重管理

急激な体重増加は、妊娠高血圧症候群や妊娠糖尿病を引き起こす可能性があります。

妊娠中の推奨体重増加量(日本産科婦人科学会)

  • BMI <18.5(低体重):12~15kg
  • BMI 18.5~<25(普通体重):10~13kg
  • BMI 25~<30(肥満1度):7~10kg
  • BMI 30以上(肥満2度以上):個別対応(上限5kgまでが目安)

※BMI = 体重(kg)÷ 身長(m)÷ 身長(m)

1週間に500g以上、1ヶ月で2kg以上の体重増加は要注意です。毎日決まった時間に体重を測り、記録する習慣をつけましょう。

ただし、体重制限にこだわりすぎて栄養不足になるのも良くありません。バランスの良い食事を心がけることが大切です。

十分な休息

安静にすることで、交感神経の緊張が緩和され、子宮・腎血流量は増加し血圧は低下します。

  • 疲れを溜めないよう、十分な睡眠をとりましょう
  • 日中も横になって休む時間を作りましょう
  • ストレスを溜めないよう、リラックスする時間を持ちましょう
  • 重い物を持つなど、過度な負担は避けましょう

ただし、適度な運動(30分程度のウォーキング程度)は問題ありません。医師に相談しながら、無理のない範囲で体を動かしましょう。

まとめ

妊婦健診での尿蛋白検査は、母体と赤ちゃんの健康を守るための大切な検査です。

妊娠高血圧症候群は重症化すると母子ともに命に関わる病気ですが、早期に発見して適切な管理を行えば、重症化を防ぐことができます。そのため、定期的に妊婦健診を受けること、そして気になる症状があればすぐに医師に相談することが何より大切です。

また、妊娠高血圧症候群になった方は、出産後も将来的に高血圧や糖尿病などの生活習慣病を発症するリスクが高いことが分かっています。妊娠中だけでなく産後も定期的に健康診断を受け、バランスの良い食事と適度な運動を続けることで、ご自身の健康を守ってください。


この記事は医療情報を提供するものであり、個別の診断や治療の代わりになるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。

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