妊娠中期(16〜27週)
マタニティライフの過ごし方
妊娠中のカンジダ症状と赤ちゃんへの影響|安全な治療法と予防策
妊娠中に「デリケートゾーンがかゆい」「おりものがいつもと違う」と感じたことはありませんか?それは膣カンジダ症(外陰腟カンジダ症)のサインかもしれません。
カンジダ症は、カンジダ菌と呼ばれる真菌(カビの一種)が膣内で異常増殖することで起こる感染症です。妊娠中はホルモンバランスの変化などにより、特にかかりやすい状態になります。「赤ちゃんに影響はないか」「どんな薬を使えばいいのか」と不安に思う方も多いでしょう。
この記事では、妊婦さんが知っておくべきカンジダ症の症状から、胎児への影響、安全な治療法、再発予防のセルフケアまでを詳しく解説します。

妊娠中カンジダ症の典型的な症状
カンジダ症の症状は特徴的なので、自分でもある程度確認することができます。ただし、自己判断は禁物ですので、症状に気づいたら必ず産婦人科を受診しましょう。
酒かす状やヨーグルト状のおりもの
カンジダ症で最も特徴的なのが、おりものの変化です。通常のおりものは透明〜白っぽく、さらっとした質感ですが、カンジダ症になると次のような変化が見られます。
- 色: 白色または乳白色
- 形状・質感: ヨーグルト状、酒かす状、またはカッテージチーズのようなボソボソとした見た目
- においの変化: 特有の酸っぱいようなにおいがすることもある
- 量の増加: 普段より量が増えたと感じる
このようなおりものの変化に気づいたときは、カンジダ症の可能性を疑って受診を検討してください。
外陰部の強いかゆみと赤み
もう一つの代表的な症状が、外陰部のかゆみです。カンジダ症のかゆみは非常に強く、日常生活や睡眠に支障をきたすこともあります。
- かゆみの特徴: 外陰部から膣口にかけての強いかゆみ・灼熱感
- 見た目の変化: 外陰部の赤みや腫れ、ただれ
- 排尿時の痛み: 炎症が強い場合、排尿時にしみるような痛みを感じることもある
かゆいからといって強くこすったり掻いたりすると、皮膚が傷つき症状が悪化するため、なるべく触らないようにしましょう。
胎児への影響と産道感染のリスク
「カンジダ菌がお腹の赤ちゃんに感染しないか」という不安は、多くの妊婦さんが抱く心配の一つです。正しい知識を持って、不安を解消しましょう。
妊娠中のカンジダ症が直接お腹の中の赤ちゃんに影響を与える可能性は非常に低いとされています。ただし、出産時に産道を通る際に感染するリスクがあります。これを産道感染といい、適切に治療せずに出産を迎えると、赤ちゃんにいくつかの影響が出ることがあります。
赤ちゃんの口内に白い斑点ができる鵞口瘡
産道感染が起きた場合、赤ちゃんに最もよく見られるのが鵞口瘡(がこうそう)です。
鵞口瘡とは、カンジダ菌が口の中で増殖することで起こる感染症で、次のような症状が現れます。
- 口の中(舌・頬の内側・上顎)に白い斑点やコケのようなものが付着する
- 白い部分を無理にはがすと、赤くただれたようになることがある
- 哺乳時に痛みを感じ、母乳やミルクを飲みにくくなることがある
多くの場合、抗真菌薬の治療で改善しますが、放置すると授乳に影響が出ることもあります。出産後の赤ちゃんの口内に白い斑点が見られた場合は、早めに小児科を受診してください。
おむつかぶれの原因となる皮膚カンジダ症
産道感染による影響のもう一つが、皮膚カンジダ症です。カンジダ菌が皮膚に感染することで、特におむつをしているお尻の周辺に炎症が起きることがあります。
- 通常のおむつかぶれより赤みが強く、境界がはっきりしている
- 小さな赤いぶつぶつ(衛星病巣)が周囲に広がることがある
- 適切な抗真菌薬の外用薬で治療できる
出産前にカンジダ症をきちんと治療しておくことが、赤ちゃんへのリスクを最小限に抑える最善策です。妊娠後期になっても症状がある場合は、必ず主治医に相談してください。
産婦人科での検査と安全な治療薬
カンジダ症が疑われる症状があっても、自己判断で薬を使うのは禁物です。産婦人科を受診して、正確な診断と適切な治療を受けましょう。
内診によるおりもの検査と培養検査
受診すると、まず内診が行われます。医師がおりものの状態を直接確認し、必要に応じておりものを採取して顕微鏡で確認する顕微鏡検査や、カンジダ菌の種類を特定する培養検査が行われます。
これらの検査により、症状の原因がカンジダ菌によるものかどうか、また菌の種類が何かを正確に診断します。似たような症状でも、細菌性腟症やトリコモナス膣炎など別の感染症の場合もあるため、きちんと検査を受けることが大切です。
胎児に影響の少ない抗真菌薬の膣錠と塗り薬
カンジダ症と診断された場合、妊娠中でも使用できる薬が処方されます。
- 膣錠(膣坐薬): 膣内に直接挿入するタイプの抗真菌薬。局所的に作用するため、全身への吸収が少なく、妊娠中でも比較的安全に使用できるとされています。代表的な成分としてクロトリマゾールやミコナゾールなどがあります。
- 外用塗り薬(クリーム): 外陰部のかゆみや赤みを和らげるために使用します。こちらも局所的に作用するタイプです。
これらの薬は医師の処方・指示のもとで使用することが前提です。自己判断での使用は避けてください。また、症状が改善したように感じても、医師に指示された期間はきちんと使い続けることが再発防止のために重要です。
自己判断による市販薬使用の禁止
薬局には、カンジダ症に使用できる市販の膣錠(フェミニーナ膣錠Sなど)が販売されています。しかし、妊娠中は必ず産婦人科を受診し、医師の判断を仰いでから使用してください。
その理由は次の通りです。
- 症状が似ている別の感染症の可能性がある: 自己診断でカンジダと思い込んで市販薬を使用しても、実際には別の感染症だった場合、適切な治療が遅れてしまいます。
- 妊娠週数による使用制限がある: 薬によっては、妊娠中の使用に慎重であるべき場合があります。医師が週数や状態を確認した上で適切な薬を選ぶ必要があります。
- 胎児への安全性を最優先に: 妊娠中のすべての薬の使用は、医師の管理のもとで行うことが原則です。
「病院に行くのが面倒」「少しくらいなら大丈夫」と思わず、症状が気になったら速やかに受診しましょう。

妊娠中にカンジダを発症しやすい理由
そもそも、なぜ妊娠中はカンジダ症にかかりやすいのでしょうか?その背景には、妊娠による体の大きな変化が関係しています。
エストロゲン増加による膣内環境の変化
妊娠中は、女性ホルモンの一つであるエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌量が大幅に増加します。エストロゲンには膣粘膜のグリコーゲン(糖の一種)を増やす作用があります。
カンジダ菌はこのグリコーゲンを栄養源として増殖するため、妊娠中はカンジダ菌が繁殖しやすい環境が整ってしまうのです。もともと膣内には乳酸菌(デーデルライン桿菌)が存在して弱酸性の環境を保ち、カンジダ菌の増殖を抑えていますが、ホルモンバランスの変化によってこのバランスが崩れやすくなります。
免疫力低下と糖代謝の変化
妊娠中は、胎児を異物として排除しないよう免疫機能が意図的に抑制されます。この免疫力の低下により、通常は問題のないカンジダ菌が増殖しやすくなります。
また、妊娠中はインスリン抵抗性が高まり、血糖値が上昇しやすい状態になります。高血糖の環境はカンジダ菌の増殖を促進するため、妊娠糖尿病の方はさらにリスクが高まります。
これらの要因が重なることで、妊婦さんはカンジダ症を発症しやすくなっています。一度治療しても再発しやすいのも、こうした体の変化が背景にあるためです。
再発を防ぐ日常生活のセルフケア
カンジダ症は治療後も再発しやすい感染症です。日常生活での工夫によって、再発リスクを下げることができます。
通気性の良い綿100パーセントの下着
デリケートゾーンの蒸れは、カンジダ菌が増殖しやすい環境を作ります。下着を選ぶ際は次のポイントを意識しましょう。
- 素材: 吸湿性・通気性に優れた綿(コットン)100%の素材を選ぶ
- 形状: 締め付けが少なく、ゆったりとしたデザイン
- ナプキン・おりものシートの使用: 長時間使用すると蒸れの原因になるため、こまめに交換する
化学繊維や締め付けの強い下着は、蒸れや摩擦を生じやすいため、妊娠中はなるべく避けることをおすすめします。
デリケートゾーンの過度な洗浄防止
「清潔にすれば感染を予防できる」と思い、デリケートゾーンを必要以上に洗うのは逆効果です。洗いすぎは膣内の常在菌(乳酸菌)まで洗い流してしまい、カンジダ菌が増殖しやすくなります。
適切なケアのポイントは以下の通りです。
- 外側のみ洗う: 膣の内部は自浄作用があるため、外側(外陰部)だけをやさしく洗う
- 弱酸性の専用ソープを使う: デリケートゾーン専用の低刺激・弱酸性の洗浄料を使用するか、ぬるま湯だけでもよい
- ゴシゴシこすらない: やわらかく泡立てて、手のひらでやさしく洗う
- 入浴後はしっかり乾燥: 洗浄後はよく乾かし、蒸れないようにする
また、食生活にも気を配ることが大切です。糖分の過剰摂取を避け、バランスの良い食事を心がけることで、カンジダ菌の増殖を抑える環境を保てます。ヨーグルトなど乳酸菌を含む食品を積極的に取り入れることも、腸内・膣内の菌バランスを整えるうえで役立つとされています。
まとめ
妊娠中のカンジダ症は、ホルモンバランスや免疫力の変化により多くの妊婦さんが経験する感染症です。酒かす状・ヨーグルト状のおりものや外陰部のかゆみが気になったら、自己判断せず速やかに産婦人科を受診しましょう。妊娠中でも使える安全な抗真菌薬があり、適切な治療を行えば赤ちゃんへのリスクも最小限に抑えられます。日々のセルフケアで再発を防ぎ、安心して出産を迎えてください。
