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2026.3.2

妊娠中期(16〜27週)

妊娠・出産の基礎知識

妊婦の静脈瘤はいつ治る?足や陰部の症状別対策と受診の目安

妊娠中に足や陰部にコブのような血管の膨らみを発見して、不安になっていませんか?これは「妊娠静脈瘤」と呼ばれる症状で、実は妊婦さんにとって決して珍しいことではありません。

この記事では、妊娠静脈瘤の種類や原因、自宅でできるセルフケア、そして産後の経過や専門医への相談タイミングについて、初めての方にもわかりやすく解説します。

妊娠静脈瘤の種類と具体的な症状

妊娠中の静脈瘤には、いくつかの種類があります。症状の出る場所や見た目が異なるため、それぞれ確認しておきましょう。

足の血管が浮き出る下肢静脈瘤

下肢静脈瘤は、ふくらはぎや太ももの血管がボコボコと浮き上がって見える状態です。妊婦さんに最もよく見られる静脈瘤で、次のような症状を伴うことがあります。

  • 足がだるく、重く感じる
  • 夕方になると足がむくむ
  • ふくらはぎがつりやすい(こむら返り)
  • 血管の周囲が痒くなる

症状は立ち仕事や長時間の歩行後に悪化することが多く、横になって足を高くすると楽になる場合がほとんどです。

デリケートゾーンに違和感が出る外陰部静脈瘤

あまり知られていませんが、外陰部静脈瘤は妊娠中に多く見られる静脈瘤のひとつです。外陰部(デリケートゾーン)や会陰部に血管が膨らみ、次のような違和感を覚えることがあります。

  • 外陰部のふくらみや腫れぼったさ
  • 圧迫されるような重い感覚
  • 長時間座ったり立ったりしていると不快感が増す

人に相談しにくい部位であるため、一人で悩んでいる方も多いですが、妊娠中によくある変化のひとつです。産後に自然に改善するケースが大半ですので、過度に心配せず、かかりつけの産婦人科医に相談してみましょう。

赤紫色の細かい血管が広がるクモの巣状静脈瘤

クモの巣状静脈瘤は、皮膚の表面に赤や紫色の細い血管が糸やクモの巣のように広がって見えるタイプです。ふくらはぎや太もも、膝裏などに現れることが多く、見た目の変化が目立つのが特徴です。

コブのようなふくらみはなく、触っても痛みを感じないことが多いですが、血液の循環が悪くなっているサインであるため、悪化させないためのケアが大切です。


妊娠中に静脈瘤が発生する原因と胎児への影響

妊娠中に静脈瘤が起きやすい理由は、主に次の3つにあります。

① ホルモンバランスの変化

妊娠中はプロゲステロン(黄体ホルモン)の分泌が増加します。このホルモンには血管壁を弛緩させる作用があるため、静脈が広がりやすく、逆流を防ぐ弁の機能が低下してしまいます。

② 血液量の増加

妊娠中は赤ちゃんに栄養を届けるため、体内の血液量が妊娠前の約1.5倍に増加します。その分、血管にかかる負担も大きくなり、静脈が拡張しやすくなります。

③ 大きくなった子宮による圧迫

妊娠が進むにつれて子宮が大きくなり、骨盤内の静脈を圧迫します。これにより足からの血液が心臓へ戻りにくくなり、下半身に血液が滞ってしまいます。

胎児への影響について

「静脈瘤がお腹の赤ちゃんに悪い影響を与えるのでは?」と心配される方も多いですが、一般的に妊娠静脈瘤が胎児に直接的な悪影響を与えることはないとされています。ただし、まれに血栓(血の塊)が生じることがあるため、痛みや腫れが強くなった場合は必ず医師に相談してください。


自宅でできる静脈瘤のセルフケアと悪化防止策

妊娠中は使える薬が限られるため、日常生活の工夫が静脈瘤の悪化防止において重要な役割を果たします。

医療用弾性ストッキングの着用

弾性ストッキング(圧迫ストッキング)は、足に適度な圧力をかけることで血液の逆流を防ぎ、むくみや静脈瘤の悪化を抑える最も効果的なセルフケアのひとつです。

選ぶ際は次のポイントを参考にしてください。

  • 圧迫圧の目安: 医療用として販売されているもので、20〜30mmHg程度の圧迫圧があるものが適しています。市販品の中には圧迫圧が低いものもあるため、産婦人科医やクリニックで相談の上、処方・推奨品を選ぶと安心です。
  • 着用タイミング: 朝、起き上がる前(むくみが少ない状態)に装着するのが最も効果的です。
  • サイズの確認: 妊娠中は体型が変わりやすいため、定期的にサイズを見直しましょう。

妊婦さん向けの弾性ストッキングは、おなかを締め付けないマタニティタイプも販売されています。

就寝時の足上げと適度なウォーキング

足を高くして休むことは、下半身に滞った血液を心臓へ戻すのに効果的です。就寝時に足の下にクッションや丸めたタオルなどを置き、足先を心臓より10〜15cm程度高くするだけで、血流の改善が期待できます。

また、適度なウォーキングもふくらはぎの筋肉を使うことでポンプ機能を高め、血流を促します。1日15〜30分程度の軽いウォーキングを習慣にしましょう。無理のない範囲で行うことが大切です。

そのほかの悪化防止策として、以下も心がけてください。

  • 長時間の立ちっぱなし・座りっぱなしを避ける
  • 足を組む姿勢を控える
  • 入浴時にぬるめのお湯で足をマッサージして血流を促す
  • 塩分を取りすぎないよう食事に注意する

出産後の経過と症状が改善する時期

妊娠静脈瘤のほとんどは、出産後3〜4か月以内に自然と改善すると言われています。出産によって子宮の圧迫がなくなり、ホルモンバランスが妊娠前の状態に戻ることで、拡張していた静脈が収縮するためです。

ただし、次のような場合は産後も症状が残ることがあります。

  • 妊娠前から静脈瘤があった
  • 複数回の妊娠を経験している
  • 遺伝的に下肢静脈瘤になりやすい体質がある
  • 長期間の立ち仕事など、生活習慣的なリスクがある

産後3〜6か月が経過しても症状が改善しない場合や、血管のふくらみ・痛みが続く場合は、下肢静脈瘤専門クリニックへの受診をおすすめします。授乳中でも受けられる治療があるため、遠慮せず相談しましょう。


専門医を受診する判断基準と病院での治療法

下肢静脈瘤専門クリニックでの検査内容

専門クリニックでは、超音波検査(エコー検査)を中心に診断が行われます。この検査は体に優しく、妊娠中でも受けることができます。

血液の流れ(逆流の有無)や静脈弁の機能をリアルタイムで確認し、静脈瘤の重症度や範囲を把握します。痛みや放射線の心配がなく、短時間で終わるため、不安を感じている方はまず検査だけでも受けてみることをおすすめします。

以下に当てはまる場合は、早めに受診を検討してください。

  • 血管の周囲が赤く腫れて熱を持っている
  • 皮膚が茶色く変色してきた
  • 静脈瘤の部分が急に痛くなった
  • 足のしびれや強いむくみが続く
  • 出産後3か月以上経過しても改善しない

産後に行う硬化療法や手術の検討

産後に静脈瘤が残った場合は、本格的な治療を検討できます。主な治療法は以下の通りです。

硬化療法は、血管内に硬化剤を注入して静脈を閉塞させる方法です。クモの巣状静脈瘤や比較的細い静脈瘤に適しており、外来で受けられる治療です。

血管内焼灼術(レーザー・高周波治療)は、カテーテルを用いて血管内から熱を加え、静脈を閉じる方法です。切開の必要がなく、日帰り手術も可能なため、体への負担が少ないのが特徴です。現在、下肢静脈瘤の標準的な治療法として広く普及しています。

治療は授乳が終わった後に行うことが多いですが、授乳中でも対応可能な場合があります。専門医に相談の上、最適なタイミングと治療法を選びましょう。


妊婦の静脈瘤に関するよくある悩みと回答

Q. 静脈瘤は出産時に破裂したりしませんか?

A. 一般的な静脈瘤が出産時に破裂するリスクは非常に低いとされています。ただし外陰部静脈瘤がある場合は、出産の際に担当医へ必ず伝えておくことが大切です。医師がケアの方法を判断してくれます。

Q. 静脈瘤を放置しても大丈夫ですか?

A. 妊娠中の静脈瘤は多くの場合、産後に自然改善が期待できます。しかし、静脈炎(血管の炎症)や深部静脈血栓症(DVT)などの合併症を引き起こすことがまれにあります。痛みや腫れが強い場合や、急に症状が悪化した場合は放置せず、必ず医師に相談してください。

Q. 弾性ストッキングを履くと赤ちゃんが苦しくなりませんか?

A. 弾性ストッキングが圧迫するのは足(下肢)であり、お腹や赤ちゃんには影響しません。マタニティ用の弾性ストッキングはお腹をカバーしていても圧迫が少ない設計になっていますので、安心して使用できます。

Q. 次の妊娠でも静脈瘤は出ますか?

A. 一度妊娠静脈瘤を経験した方は、次の妊娠でも再発しやすい傾向があります。予防のために、妊娠初期から弾性ストッキングを使用したり、長時間の立位を避けたりすることで悪化を抑えることが期待できます。


まとめ

妊娠静脈瘤は、ホルモンの変化や子宮の圧迫によって多くの妊婦さんに起こる症状です。足の下肢静脈瘤や外陰部静脈瘤など種類はさまざまですが、出産後3〜4か月で自然に改善するケースがほとんどです。妊娠中は弾性ストッキングの着用や足上げ・ウォーキングなどのセルフケアで症状を和らげ、痛みや腫れが強い場合や産後も改善しない場合は、下肢静脈瘤専門クリニックへ相談しましょう。

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